マーケティングって何?掃除機市場を例に解説してみるよ。

16046251491_b6552da8d9

こんにちは。マーケター&ブロガーのユージーン(@Eugene_no2)です!

かれこれ8年ほど、マーケティングの仕事を続けてきました。このブログでも、ときどきマーケティングに関するコラムも書いてます。

合わせて読みたい マーケティングのコラム | No.2宣言
カテゴリーページです。

でも「マーケティング」という言葉は知っていても、実際はよく分からないって人が多いんですよね。

そこで今回は、掃除機市場を例に出しながら、マーケティングとは何か?わたしなりに解説したいと思います。

マーケティングとは、価値を作り、その価値を伝え、顧客のニーズを満たすこと

マーケティングには色んな定義があります。例えば、日本マーケティング協会の定義はこんな感じ。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。(引用:JMA

どうです?まぁ、これがスッと理解できる人には、マーケティングの解説は不要でしょうね(笑)

マーケティングって実際にかなり広い場面で使われる概念なので、このような漠然とした定義になりがちです。

では、マーケティングの定義を分かりやすく一言で言い表すとどうなるのか。わたしの答えがこちらです。

価値を作り、その価値を伝え、顧客のニーズを満たすこと

マーケティングのゴールは、自社の商品やサービスと、顧客のニーズをマッチングさせることです。

そのために、市場調査などによって顧客のニーズを理解することに始まって、その顧客のニーズを満たす商品やサービスを作るんです(=価値を作る)。

でも作っただけでは顧客には届かないので、作った商品やサービスを顧客に知ってもらい、その価値を理解してもらう(=価値を伝える)ことによって、顧客のニーズを満たす。

マーケティングとは要するに、こういうことなんです。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のドラッガー教授は、

究極のマーケティングは、セリング(販売)を不要にするもの

と言っています。

これはどういうことかと言うと、商品やサービスと顧客のニーズがぴったり合っていれば、積極的な売り込みをしなくても、顧客は商品やサービスを買ってくれる、ということを言っているわけです。

価値を作り、その価値を伝え、顧客のニーズを満たすこと。

これがわたしなりのマーケティングの定義です。

掃除機市場のマーケティング

ではこのマーケティングの定義を、掃除機業界を例に出しながら、もう少し解説してみたいと思います。

日本企業はマーケティングが下手くそ?

どこの企業というわけでなく、また掃除機を作るような家電メーカーに限らず、日本にはマーケティングが下手くそな企業が多いと思います。

それは、そもそもマーケティングという概念自体、アメリカから輸入されたからという事もありますが、もう一つ大きな要素として、多くの日本企業の商品開発は、技術や研究(=俗にいう「シーズ」)が基点になっているという特徴があります。

かつて技術大国と言われたように、日本企業の技術力はものすごいものがあります。

技術大国ニッポン

新しい技術を使って作れるものを商品化する」というのが、多くの日本企業に見られる商品開発のやり方です。

そうなると、商品は性能やスペックでの競争となるわけです。

例えば、家電量販店に行って、掃除機の売場を見てみると、性能や商品スペックのうたい文句が目につきます。

吸引力に優れている、省エネ性能が高い、重量が軽い、音がうるさくない、サイズがコンパクト・・・。

各メーカーがそういったスペック争いをしているように見えます。

このように見ると、多くの日本企業が作り出している価値は、スペックだといえます。

とにかく「性能が高い」という価値を作り出し、それをそのまま伝えています。

でも、そこにはマーケティングにおける「顧客のニーズを満たす」という部分が欠落しています。

【マーケティングの定義】※おさらい
価値を作り、その価値を伝え、顧客のニーズを満たすこと

よく、いらない機能や、必要十分すぎるスペックの家電製品に出くわすことって、ありませんか。

なぜそんな商品が生み出されてしまうのかと言えば、技術や研究をベースに商品開発をしているからなんです。

もちろん、技術から生まれた商品が、顧客のニーズに(たまたま)合致することで、ヒット商品となることもあります。

しかし、「顧客のニーズ」とかけ離れた商品も、やはり多い。そしてそれは、日本企業に多いなと感じるんですよね。

価値の伝え方が巧みな「ダイソン」

いまや、掃除機市場で圧倒的な存在感を持つのが、ダイソン。

ダイソン掃除機の価値は何かといえば、誰もが「吸引力」と答えるでしょう。

そういう意味では、ダイソンも、多くの日本企業と同じように「スペック」で勝負しているわけです。

それも、他社の掃除機と、わざわざ吸引力の変化のテストまでして、自分たちが一番だとアピールしていますね。

でも、ダイソンが「日本企業と違うな」と思うのが、価値の伝え方が圧倒的に上手だということ。

【マーケティングの定義】※おさらい
価値を作り、その価値を伝え、顧客のニーズを満たすこと

ダイソン掃除機の価値は、いわずもがな、吸引力です。

これまでダイソンは一貫してぶれることなく、テレビCMなどのマス広告を使ってひたすら「吸引力が変わらない、ただ一つの掃除機」という価値を伝え続けてきたわけです。

これによって、何が起きたかというと、日本の消費者に「掃除機で大事なのって、やっぱり吸引力だよね」と思わせてしまったのです。

ある意味、消費者のニーズを変えてしまったと言えるのかも知れません。

もちろん、本当は意識がそっちに向いただけで、本質的にニーズが変化したわけではないと思います。

実際に、ダイソンユーザーの声を聞くと、重い、騒音がうるさい、といった不満も少なくないようです。

その点では、ほかの日本製の掃除機のほうが、どう考えても優れているはず。

にも関わらず、「吸引力」という価値を伝え続けたことで、選ばれるブランドを作り上げたのが、ダイソンの凄さと言えるでしょう。

合わせて読みたい ダイソン掃除機の吸引力は変わらないが弱いというカラクリ | No.2宣言
ダイソン掃除機の代名詞といえば、「吸引力」ですが、実は、必ずしも吸引力が強いというわけでは無いんです。

商品の価値自体がさほど優れたものでなくても(失礼)、価値の伝え方によって、うまくいくマーケティングもあるという、一つの事例でもあります。

ちなみに、日立製作所は負けず嫌いなのか、わざわざダイソンが作り上げた「吸引力」という土俵に上がりこんで勝負を仕掛けたりしていますが、この土俵でダイソンに勝つことは難しいでしょう。

合わせて読みたい 日立さん、吸引力で勝負したらダイソンの思うツボですよ! | No.2宣言
吸引力っていう言葉を使った時点で、もう既にダイソンの術中にハマっていると私は思うんです。

ニーズ発想で生まれた三菱「インスティック」

前の章で、多くの日本企業の商品開発は、技術や研究がベースになっているという話をしましたが、逆に「顧客のニーズ」をベースにして生まれた掃除機もあります。

それが、三菱電機の「インスティック」という掃除機です。

ご存知ない方もいるかも知れませんが、「インスティック」の機能的な特徴は、インテリアのようなデザインと、空気清浄機能が付いているという2点です。

つまり、掃除機を使わないときは、しまわずにリビングに置いておくことで、インテリアにもなるし、空気清浄機にもなるのです。

これぞ、まさにマーケティングの成功事例だとわたしは思います。

【マーケティングの定義】※おさらい
価値を作り、その価値を伝え、顧客のニーズを満たすこと

三菱電機は、掃除機ユーザーへの調査によって、

掃除機は、いちいち出したりしまったりするのが面倒くさい。しかも結構な収納スペースを必要とする。

という顧客のニーズに気づいたわけです。

では、そのニーズを満たすにはどうすればいいか?という視点に立ったときに生まれたのが、収納するのではなく「インテリアとしてリビングに置いておける」というコンセプト。

掃除機としては珍しい空気清浄機能が付いているのは、リビングに置くことを前提にした結果、付け加えた「価値」なのでしょう。

リビングに置いておけるデザインにすることも、空気清浄機能を付けることも、技術や研究をベースにした商品開発では、決して生まれることのない発想です。

マーケティングの王道として、きちんと顧客のニーズに注目し、そのニーズを満たす価値を作り上げたことで、成功できたのです。

掃除機自体の価値を変えてしまった「ルンバ」

最後に紹介するのが、ロボット掃除機「ルンバ」です。

「ルンバ」はご存知の通り、床の掃除を自動で行ってくれる、ロボット掃除機です。

全く画期的な商品なので、マーケティングの成功事例と呼ぶべきではないかも知れませんが、あえてマーケティングの視点で取り上げてみます。

実は、「ルンバ」もマーケティング的に言えば、成功の構図は、三菱の「インスティック」と同じです。

つまり、

掃除なんて、出来ることならばやりたくない

という顧客のニーズに注目し、それを満たしているのです。

顧客の隠れたニーズを見つけ、それを満たす価値を作り、届ける。まさにマーケティングの王道と言えます。

マーケティング的な視点で、ルンバがものすごく勉強になるなと感じるのは、着眼点です。

「掃除なんて、出来ることならばやりたくない」というニーズは、どんなに市場調査をやったところで、出てこないでしょう。

だって、「掃除機に求めることは何ですか?」と聞いても、「掃除をしなくて済むこと」なんて絶対に出てくるはずが無いですから。

掃除機を、「掃除を効率的に終わらせるための道具」と捉えていたら、絶対に見つけられない着眼点だと思います。

これからのマーケティングの勝負はどんなニーズに着眼するか?

今回は掃除機市場を事例に挙げましたが、掃除機に限らず、これだけものが飽和した日本では、性能やスペックでの差別化がこれ以上うまくいくとは思えません。

ほとんどの市場で、必要最低限の性能やスペックは、既に満たされているわけです。

そうなると、これからの時代、マーケティングのポイントとなるのは、「顧客のどんなニーズを満たすのか?という着眼点だと、わたしは思います。つまり、

吸引力に優れた掃除機が欲しい(ダイソン)

という表面的なニーズではなく、

掃除機は、いちいち出したりしまったりするのが面倒くさい。しかも結構な収納スペースを必要とする。(インスティック)
掃除なんて、出来ることならばやりたくない(ルンバ)

という潜在的なニーズに気付けるか。

でも実際のところ、「掃除なんて、出来ることならばやりたくない」なんて、誰にでも理解できる「当たり前」のことなんですよね。

でも、みんなそれが当たり前だと思っているからこそ、そこに注目することはまず無い。

簡単なようで難しいですが、今までにない着眼点を見つけられたときは、最高にワクワクするものです。

では、今日も頑張らずに楽しんでいきましょう~!

16046251491_b6552da8d9